この記事を書いた人

産婦人科専門医、マンモグラフィ読影認定医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に婦人科の分野に力を入れている。
2026年4月に横浜市金沢八景でクリニックを開業予定。
低用量ピルは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)と呼ばれる2つの女性ホルモンが配合されている薬です。
女性の健康や生活の質をサポートするための薬として広く使われており、避妊だけでなく、生理痛の緩和や月経不順、PMS(月経前症候群)の改善など、多くの効果があります。
目次
低用量ピルの種類やタイプ
ピルの種類
エストロゲンが含まれる量により中用量ピル・低用量ピル・超低用量ピルに分類されます。
- 中用量ピル:生理移動の際に使用する薬です。
- 低用量ピル:避妊や月経痛、PMSの症状緩和目的で使用します。
- 超低用量ピル:月経痛、PMSの改善目的で使用します。
- ミニピル:低用量ピル、超低用量ピルが使用できない方に使えるお薬です。
- アフターピル:緊急避妊薬として使用されています。
世代
低用量ピルにはいくつか種類がありますが、使用されている黄体ホルモンの種類により分類されています。
第1世代「ノルエチステロン」という黄体ホルモンを使用したピル | シンフェーズ、ルナベル、フリウェル |
第2世代「レボノルゲストレル」という黄体ホルモンを使用したピル | トリキュラー、アンジュ、ラベルフィーユ、ジェミーナ |
第3世代「デソゲストレル」という黄体ホルモンを使用したピル | マーベロン、ファボワール |
第4世代「ドロスピレノン」という黄体ホルモンを使用したピル | ヤーズ、ドロエチ、アリッサ |
相性
低用量ピルは28日を1周期として1日1錠決められた時間に服用します。
28日のうち21日はホルモンが含まれたピルを服用しますが、この含まれているホルモンの割合により2つに分類されています。
1相性:実薬に含まれるホルモン量が一定
マーベロン、ファボワール、ルナベル、フリウェル、ジェミーナ、ヤーズ、アリッサ
3相性:実薬に含まれるホルモン量が三段階に分かれている
トリキュラー、アンジュ、ラベルフィーユ、シンフェーズ
以上の様に低用量ピルといっても様々な種類があります。
これらの中から、医師があなたの症状や目的に合ったタイプを選び処方していきます。
低用量ピルの効果と期待できること
低用量ピルは、単に避妊のためだけではなく、以下のような多岐にわたる効果があります。
高い避妊効果
避妊用のピルに関しては、正しく使用することで99%以上の避妊率が期待できます。
月経不順の改善
ホルモンバランスを整えることで、周期を安定させます。
生理痛の軽減
子宮内膜の増殖を抑えるため、生理前や生理中の痛みを軽減させます。
PMS(月経前症候群)の緩和
情緒不安定や生理前の体調不良の改善に効果があります。
肌荒れの改善
ホルモンバランスの調整によって、ニキビや肌トラブルの軽減が期待されます。
低用量ピルは、多くの女性にとって日常生活を快適にする助けとなる薬です。
低用量ピルの副作用とは?服用中に注意するべき点
低用量ピルの服用により、一時的に以下のような副作用が現れることがあります:
吐き気や頭痛
初めて服用した際に感じることがありますが、内服を継続する事で症状は軽減します。
不正出血
初期段階でみられることがありますが、多くの場合は継続使用で改善します。
ただ、内服継続している間も、飲み忘れがあった場合や、内服時間がずれることで不正出血の症状が出ることがあります。
乳房の張り
内服開始時、一時的に起こることがありますが、内服継続にて症状は軽減します。
これらの副作用が長期間続く場合は、医師に相談してください。また、ピルが体に合わない場合は別の種類を検討することが可能です。
低用量ピルのデメリットと注意点
低用量ピルは便利な薬ですが、以下の点に注意する必要があります:
服用を継続する必要がある
毎日決まった時間に服用する必要があり、飲み忘れによる効果低下のリスクがあります。
血栓症のリスク
深部静脈血栓症(血栓ができる病気)などのリスクがごく稀にあります。
そのため、当院では以下の様な方にはピルを処方することができません。
- 重度の肥満(BMI30以上)
- 乳がんや子宮体癌の既往がある方
- 喫煙者(35歳以上は1日15本以上、34歳までは1日20本以上)
- 血栓症の既往がある
- 心臓や腎臓に疾患がある方
- 未治療の高血圧がある方
- 40歳以上の初回投与の方
- 妊娠中、授乳中の方
- てんかんで内服治療中の方
感染症予防効果はない
低用量ピルは性感染症を予防する効果はありません。
性感染症予防のためにはコンドームを併用する必要があります。
保険適用外
避妊目的のピルに関しては保険適用外であり、自費での処方になります。
これらのデメリットや注意点について正しい知識を持ち、医師と相談しながら安全に使用しましょう。
ミニピルに関して
当院ではスリンダというミニピルを取り扱っています。
1シートは28日分あり、24錠の実薬と4錠の偽薬からなるピルです。
低用量ピルとの違いは、エストロゲンを含まないため、血栓症のリスクがほとんどありません。また、低用量ピルと同様に生理痛やPMSへの効果も期待されています。
これまで低用量ピルの服用ができなかった方(喫煙者、高血圧、肥満、40歳以上など)にも処方が可能な薬です。
ただ、ミニピルは保険適応外のため、処方に関しては自費診療になります。
まとめ
低用量ピルは、多くの女性にとって健康と生活の質を向上させる有用な選択肢です。ただし、副作用やデメリットについても理解し、自分の体調やライフスタイルに合った方法を選ぶことが重要です。気になることがあれば、ぜひご相談ください。