この記事を書いた人

産婦人科専門医、マンモグラフィ読影認定医の資格を持ち、医師として約10年医療現場に立つ。
特に婦人科の分野に力を入れている。
2026年4月に横浜市金沢八景でクリニックを開業予定。
目次
更年期とは
毎月の月経がなくなり、女性が閉経を迎える年齢は、50歳前後といわれています。
一般的にはその閉経を挟んだ45~55歳の約10年間を更年期と呼んでいます。
閉経には個人差もありますので、45歳よりも前から更年期が始まる方もいます。
更年期障害の症状
人によってさまざまな症状が現れます。
- 肩こり
- 疲労感
- 頭痛
- のぼせやほてり、多汗
- 腹痛、腰痛、関節痛
- 手足のしびれ
- 性交痛、萎縮性膣炎
- よく眠れない、不眠
- めまい
- イライラする
- 気分が落ち込む、不安になる など
上記の症状がよく見られます。
更年期障害のしくみ
どうしてそのような症状が起こってしまうのでしょうか?
女性ホルモン“エストロゲン”の減少が原因
更年期には閉経に伴って卵巣の働きが衰えます。
それにより女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減少していき、それまではエストロゲンによって調整されていた身体のいろいろな機能に支障が出てきます。
そこから、疲れやめまい、肩こりやほてりといった体の症状につながります。
エストロゲンの減少を受けて、脳から卵巣に対し女性ホルモンを出すように指令が送られます。
その際のシグナルが脳に不要な興奮を起こしてしまうことがあり、そのために自律神経の不調が生じ、気分が落ち込んだり、イライラしたりといった症状が現れます。
また、女性ホルモンにはコレステロールの上昇を抑制する作用、骨量を増加させ骨折を予防する作用もあります。
更年期に入ると女性ホルモンの低下により脂質異常症や骨粗鬆症のリスクが高くなるため、閉経前後の方は脂質異常症の血液検査や骨密度の検査もお勧めしております。
更年期障害の治療
更年期障害の原因は、先に説明したようにホルモンバランスの崩れが原因です。
不足している女性ホルモンを補うことが主な治療になります。
ホルモン補充療法(HRT治療)
ホルモン補充療法は更年期障害の治療として最も効果があり、認知症やアルツハイマー病、骨粗鬆症の予防にも繋がると言われています。
漢方薬にて症状の改善が乏しい方、卵巣機能低下による症状が明らかな方は、HRT治療が有効です。
ただ、乳癌の既往がある方、血栓症・脳梗塞・心筋梗塞の既往がある方は使用できません。
また、肥満や血栓リスクのある方、高血圧・脂質異常症・糖尿病などの持病がある方は慎重投与となります。
現在は、内服薬・貼り薬・塗り薬など様々な種類の製剤がありますので、患者様の症状や月経の状況に応じて最適な使用方法をご提案させていただきます。
漢方薬による治療
ホルモン補充療法の他にも、漢方を使用した治療もございます。
多様な症状でお悩みの場合には、漢方が有効なこともあります。
更年期の症状によってはホルモン補充療法より、まずは漢方薬が有効な場合もあるため、更年期の症状に応じて患者さんごとの最適な漢方薬をご提案させていただきます。
抗うつ薬・抗不安薬による治療
からだの不調だけでなく、精神的な不調がつらいという場合には、抗うつ薬などの処方による治療もありますが、深刻なうつ状態になってしまった場合には、心療内科や精神科などの専門医への受診もお勧めしています。
更年期障害は女性なら誰にでも起こるものです。
「自分だけがおかしくなってしまった」「なぜこんな風になってしまうのか」と、一人で悩む必要はありません。
体や心に不調があれば、まずは医療機関を受診してみましょう。
更年期障害であること、また更年期の間だけの症状であることを知るだけでも、ストレスが軽減されることもあります。